労働審判手続は、答弁書の提出期限までにどれだけ有効な証拠を集め、充実した答弁書を作成し、第1回期日に備えるかで、9割方勝負が決まります。
答弁書の提出期限の変更は原則認められませんので、会社は、裁判所から労働審判申立書が届いたら、全力で答弁書を作成していく必要があります。また、労働審判を特定の弁護士に依頼したい場合は、すぐに弁護士に連絡し、第1回期日のスケジュールを確保してもらうことをお勧めします。
労働審判は3回以内の期日で結論が出るとされていますが、実際の運用では、第1回期日で審理を終え調停に入ることが多く、第2回期日が開催される場合であっても、調停をまとめるだけに開かれるということも珍しくありません。
第1回期日終了後に追加主張しようとしても、ほとんどの場合は認められませんので、労働審判申立書が届いたら、第1回期日に向けて、全力で準備していかなければなりません。
労働審判は第1回期日まででほぼ勝負が決まるため、充実した答弁書を提出することは極めて重要です。
第1回期日で質問されそうなことは、できるだけ答弁書に書き込んでおきましょう。質問されそうなことを書きこんでおけば、期日当日の負担を減らすことができます。会社関係者は労働審判の期日に不慣れなことが多いため、期日では、緊張して事実を正確に伝えられないこともめずらしくありません。
言いたいことが言えないまま終わってしまうことがないようにするためにも、事前に答弁書に言いたいことをしっかり盛り込んでおき、労働審判の期日に話さなければならないことをできるだけ減らしておくことが、最も効果的です。
ただし、不必要にページ数の多い答弁書にならないよう注意しましょう。
労働審判期日では、労働審判委員会(裁判官1名、労働審判委員2名)から事実関係について質問されますので、問題となる事実関係について直接体験した人に出頭していただく必要があります。直接体験した人ではなく、報告を受けただけの人や、弁護士だけが出頭する場合、証言の証拠価値が下がり、事実認定の上で会社の不利益となってしまうことがあります。
また、調停に応じるかどうかその場で判断できる立場の人も同行することが望ましいです。一旦会社に持ち帰らないと決められないというのでは、まとまる調停もまとまらず、長期間に渡り訴訟で戦う事態を余儀なくされる可能性が高くなります。調停に応じるかどうか判断できる人が出頭できないのであれば、せめて期日中は電話に出られるようにしていただき、調停に応じるかどうか電話で指示ができるようにしていただくことをお勧めします。