労働審判FAQ

労働審判が訴訟に移行した場合の流れについて教えて下さい。

 労働審判事件が訴訟に移行するのは、
 ① 労働審判に対して異議が申し立てられた場合
 ② 24条終了の場合
 ③ 労働審判が取り消された場合
ですが、通常は、①②の場合に訴訟に移行することを理解しておけば足りるでしょう。
 ①労働審判に対して当事者のいずれかから適法な意義の申立てがなされると、労働審判は失効し、当該労働審判事件を行っていた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます。
 ②24条終了した場合も、①と同様に訴えの提起があったものとみなされます。

 労働審判手続が訴訟に移行すると、地方裁判所に労働審判事件の記録が引き継がれます。裁判長は、訴状とみなされた労働審判手続の申立書、申立の趣旨又は理由の変更申立書等について審査を行い、不備がある場合には補正を命じ、原告が補正に応じない場合には、これらの書面を却下します。
 また、原告は、訴え提起の手数料を裁判所に納付する必要があります。この場合の手数料は、通常の訴え提起の手数料から労働審判手続申立て時に納付した手数料を控除した額となります。原告が、訴え提起の手数料を支払わなかった場合には、訴状とみなされた労働審判手続の申立書等は却下されます。
 訴状とみなされた労働審判事件の申立書等以外の答弁書等の主張書面、証拠の写し等は、訴訟に引き継がれず、これらを訴訟における資料とするためには、改めてこれらの資料を陳述、提出する必要があります。
 東京地方裁判所では、原告が労働審判手続の経過を踏まえた「訴状に代わる準備書面」を提出し、被告がこれに対するに答弁書を提出することから訴訟の審理が始まります。労働審判事件の申立書そのものを訴状とみなして被告がこれに対する答弁書を提出するよりも、「訴状に代わる準備書面」を提出して被告がこれに対する答弁書を提出する方が、労働審判手続の経過を訴訟に反映させることができ、合理的だからだと考えられます。
 原告が、労働審判手続の経過を踏まえた「訴状に代わる準備書面」を提出した場合、労働審判手続の際の争点整理や主張立証が訴訟に反映されるため、移行後の訴訟で判決に至る期間は、初めから訴訟提起した場合と比較して短くなることが多く、労働審判手続を得て訴訟に移行し判決に至った場合と、最初から訴訟提起され判決に至った場合とで、判決までの期間に大きな差はありません。