労働審判手続において調停がまとまる見込みが低い場合、当事者双方が出頭している期日において口頭で労働審判の主文、理由の要旨を当事者双方に告知する方法により労働審判が行われるのが一般的です。
労働審判の主文は、当事者間の権利義務関係と手続の経過を踏まえたものである必要がありますが、労働審判委員会が柔軟に定めることが可能です。たとえば、労働審判委員会が解雇無効の心証を抱いた事案において、労働者が金銭解決を望んでいる場合は、退職の確認と金銭の支払を内容とする労働審判が言い渡されることがあります。
労働審判に不服のある当事者は、労働審判期日において労働審判の告知を受けた日から2週間以内(当事者が欠席している場合などで労働審判期日における告知がなされなかった場合は、審判書の送達を受けてから2週間以内)に、裁判所に異議の申立てをすることができます。口頭で労働審判の告知を受けた場合は、審判書を受け取っていなくても、口頭で労働審判の告知を受けた日から異議申立て期間が進行しますので注意してください。
適法な意義の申立てがあると、その時点で異議を申し立てた当事者に有利な部分を含め労働審判はその効力を失い、労働審判手続の申立ての時に事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます。
いったん申し立てた異議を取り下げることはできません。
異議の申し立てがない場合は、労働審判は確定し、裁判上の和解と同一の効力を有します。つまり、労働審判で命じられた金銭の支払いを期限までに行わなかった場合、会社の預金口座等に差し押さえがなされる可能性があります。
労働審判に異議を申し立てるかどうかの判断は、労働審判の内容の妥当性、訴訟移行後の時間や金銭などの負担、他の労働者への波及効果等を考慮して、冷静に判断する必要があります。異議を申し立てるかどうかの判断が難しい場合は、労働問題を中心業務としている会社経営者側弁護士に相談することをお勧めします。