労働審判FAQ

第1回労働審判期日の概要とポイントを教えて下さい。

 第1回労働審判期日は、原則として、労働審判の申立てがあった日から40日以内に指定されます。労働審判の申立てから労働審判手続申立書などが会社に届くまではタイムラグがありますので、第1回労働審判期日は裁判所から労働審判手続申立書が会社に届いてから1か月くらい先になるのが一般的です。
 第1回労働審判期日では、労働審判官、労使双方の労働審判員の自己紹介がなされた後、争点の確認が行われ、証拠調べがなされます。労働審判手続における証拠調べは、訴訟における証人尋問のように代理人弁護士が相手方当事者に質問するのではなく、労働審判官(裁判官)や労働審判員が、労働者本人や会社経営者、会社担当者に直接質問する審尋の形式により行われます。したがって、労働審判期日に出頭する会社経営者、会社担当者は、労働審判官や労働審判員からの質問に回答できるよう事前に準備しておかなければなりません。
 労働審判官や労働審判員が生の事実を把握するためには、代理人弁護士ではなく、労働者本人や事情をよく知る会社経営者、会社担当者に直接質問することが適切ですので、労働者本人や事情をよく知る会社経営者、会社担当者に直接質問がなされ、代理人弁護士には原則として質問がなされません。代理人弁護士に期待されている役割は、基本的には当事者へのサポートであり、複雑な事実関係や法的主張の説明をすることがある程度です。
 労働審判期日における労働審判委員会からの質問にうまく答えられなくて困ったというような事態を回避するための一番の対処法は、予想される質問に対する回答を予め答弁書に書き込んで提出することです。答弁書に記載してあれば質問されないことが多いですし、質問されたとしても、よく打合せして作成した答弁書に記載してある内容であれば容易に回答することができるはずです。
 証拠調べにかかる時間は30分~1時間程度が一般的です。事案が単純で充実した申立書、答弁書が双方から提出されているような場合には、5分~10分程度で証拠調べが終わることもありますし、事案が複雑であるにもかかわらず申立書、答弁書で必要な事実関係の記載が抜け落ちていたり、申立書、答弁書の推敲が不十分で分かりにくいような場合は、第1回労働審判期日で証拠調べが終わらないこともありますが、ほとんどの労働審判事件では、30分~1時間程度、質問に答えた時点で証拠調べを終えることになります。
 一通り証拠調べが終わると、当事者双方は席を外し、労働審判委員会による調停が試みられます。10分くらいすると当事者の一方が呼び出され、労働審判委員会の心証を伝えられた上で、どのくらい譲歩するつもりでいるのか、意向を聴取されます。会社側であれば、何円までであれば解決金を支払う意思があるのかといった調停条項について回答しなければなりませんので、労働審判委員会が合議している間に、支払う用意がある解決金の額を中心とした調停条項の検討をしておくようにしましょう。
 再び席を外して労働者側と交代した後、労働審判委員会から伝えられた心証を踏まえて解決金の額等を検討します。妥当な解決金の額等の調停条項は、一時的には権利義務関係を踏まえて検討されなければなりませんが、他の労働者への波及効果や、調停をまとめずに労働審判が出され労働審判に対して異議を申し立てて訴訟に移行した場合にかかる時間、費用、労力といったコスト等を考慮に入れた上で決定し、再び労働審判廷に呼び出された際、労働審判委員会に伝えます。
 労働者側が合理的条件を提示している場合は、ある程度の駆け引きをすることはあるかもしれませんが、特別な事情がない限り、第1回労働審判期日で調停をまとめてしまうべきでしょう。労働審判事件全体の約21%は、第1回労働審判期日で調停が成立しています。
 労働者側から提示された条件が合理的範囲を超えている場合は、直ちに調停に応じることはせず、第1回労働審判期日が終わるまでに合理的なところまで条件が下がってくればその場で調停をまとめることになります。第1回労働審判期日が終わるまでに調停がまとまらなかった場合で、第2回労働審判期日を開催すれば調停がまとまる可能性がある場合には、第2回労働審判期日まで双方が解決金額などの条件を検討することとして、第1回労働審判期日を終了させます。第2回労働審判期日までにすることは、解決金額を中心とした調停条件の検討ですから、それほど時間がかかるものではありません。第2回労働審判期日は、第1回労働審判期日の2週間後くらいに入れれば十分なことが多い印象です。他方、双方の考えに隔たりが大きく、第2回労働審判期日を開催しても調停がまとまる見込みがない場合は、第1回労働審判期日で直ちに労働審判がなされることもあります(労働審判事件全体の約2~3%)。
 第1回労働審判期日は通常、調停を含め2時間程度で終わります。ただし、もう少しで調停がまとまりそうな事案で調停が長引いて3時間30分かかったケースもありますので、念のため、4時間程度の時間を取られても不都合が生じないようスケジュールを調停しておくことをお勧めします。