労働審判手続の勝負のポイントを一言でいうと、「第1回労働審判期日までが勝負」です。労働審判手続では、第2回労働審判期日までに主張及び証拠書類の提出を終えることとされていますが、これは第2回労働審判期日までに会社の主張立証を準備すればいいというわけではありません。実際の労働審判手続では、第1回労働審判期日で証拠調べを行い心証を形成し、労働審判委員会が形成した心証に基づき直ちに調停に入ることは珍しくありません。第1回労働審判期日における調停では、第1回労働審判期日までに形成された心証に基づいて試みられることになりますので、第2回労働審判期日で主張立証しようとしているものがあったとしても全く考慮してもらえません。
第2回労働審判期日が開催されたとしても、第1回労働審判期日で行われた証拠調べや調停を前提に証拠調べや調停が行われることに変わりありません。第1回労働審判期日終了後になされた主張立証により、第1回労働審判期日までにいったん形成された労働審判委員会の心証を覆すことは、最初から十分な主張立証を行って会社に有利な心証を形成してもらうのと比べて、難易度が高くなる傾向にあります。第1回労働審判期日までに主張立証できなかった重要な事実等がある場合は、第1回労働審判期日終了後であっても主張立証していくべきですが、第1回労働審判期日までに主張立証を終えている場合と比較して会社に有利な心証を形成してもらいにくくなることを肝に銘じなければなりません。
労働審判事件は、第1回労働審判期日までに充実した準備を行うことが勝敗の分かれ目であることが多く、まさに「第1回労働審判期日までが勝負」といえます。