労働審判手続は第1回労働審判期日までが勝負ですから、答弁書等の作成に十分な時間をかけて万全の態勢で第1回労働審判期日に臨みたいところですが、業務が忙しいなどの理由から答弁書の作成に十分な時間が取れず、第1回労働審判期日を延期してほしいという場合があります。しかし、第1回労働審判期日の変更は、なかなか認めてもらえません。労働審判手続は、労働審判官だけでなく、労働審判員2名の日程調整もしなければなりませんし、第1回労働審判期日の延期を認めてしまうと労使紛争を迅速に解決できなくなってしまうからです。
もっとも、会社側が最低限必要な反論準備さえできなかったり、会社関係者が期日に出頭できなかったりすれば、第1回労働審判期日は事実上空転してしまいますので、第1回労働審判期日を当初の予定どおり開催することにどれだけ意味があるのかという疑問が生じてきます。第1回労働審判期日の変更について申立人の了解が得られるのであれば、迅速解決のみを理由として第1回労働審判期日を変更しない理由にはならないでしょう。労働審判手続申立書が届いたばかりで労働審判員が選任される前であれば、労働審判員とのスケジュール調整の問題も生じません。裁判所によっては、申立人の同意などを条件に第1回労働審判期日の変更を認める運用をしているところもありますので、どうしても第1回労働審判期日の変更が必要な場合は、裁判所に事情を説明して交渉してみるといいでしょう。